この映画は、TVで観た。先日何気なくBDのリモコンを動かしていたら、昔録画してあったことを思い出して、まあちょっと観てみようかな、といった軽い気持ちだったと思う。
この映画はやはり原田知世の実写版が有名であったが、当時の記憶ではなんだかパッとしない映画だなあと思っていたので、このアニメ版もさほど期待はしていなかった。
しかし、意外や意外、かなり面白かったのだ。
何といっても、時の流れが変化していく感覚が、実写版より鋭くて面白い。
時が逆戻りすることは、普通に生きていくことでは起こり得ることではない。時は金なり。流れてしまった時間は、絶対に取り戻すことは出来ない。それは当たり前のことであるのに、ふと自分にはちょっと前の出来事が手に取れるように思えてしまう時があって、時間ってすぐに取り戻せる感覚になる。いつも自分が通ってきた過去の時間の道が、ふーっと映画の場面ダイジェストのように映像となって自分の頭の中を駆け巡ることが日常的にわりとあるからかもしれない。でももちろんそれは、現実的には取り戻せるような気がするだけで、過去に戻って何かをやり直せるようなことなどないので、現実の今生きている世界に落ち込む。
何度も言うようだが、今の現実に過去のことを体験することは出来ない。あくまで自分の想像の中で思い返すだけだ。過去の時間に遡ってやり直すなんて出来ない。
しかし、この映画の中では出来てしまう。それが面白いのだと思う。
原作や実写版では、タイムトリップの切っ掛けが、ラベンダーのような香りだったと思うのだが、アニメでは小型カプセルのような近未来的な機械装置で、トリップ出来る回数に限りがあるって独自の発想も面白かった。(匂いっていうのもノスタルジックな要素で良いんだけどね)
でもやっぱりこの映画を観終わった後、つい過去に戻ってやり直したいことってたくさんあるよなあ、と考えてしまう。
中学の体育祭の時、リレーのバトンを落としてしまったこと・転校した女の子に好きだって言えなかったこと・小学生の時プチ家出をした日・高校の友達に年賀状の返事を書かなかったこと・野球の試合で致命的なエラーをしてしまった時・卒業する時にもっと勉強していれば浪人生にならなかったこと・よく面倒をみた会社の後輩が仕事を辞める時に、素直に新しい所でも頑張れよと言えなかったこと・大切な人を大事に出来なかった時...。
あの時、本当はこうしていたらどうだっただろうか、今は。今の自分はどうなっていただろうか。
またこの映画は時間の流れという大きなテーマと共に、淡く深い恋心も、とても大切なスパイスとなって彩りをつけている。時間の流れの切なさと、初恋のような淡い、そして深い切なさは、とてもリンクしやすいのだと感じた。自分が思い返した出来事の中でも、淡い恋の思い出は、一瞬でもあの頃に戻りたい、と思わせる要素がたくさんある。(そのことでたくさん失敗したので、たくさんやり直したいと思っているところもあるのだが)
映画の中では、何度も過去に戻れることを知った主人公が、何かとちょっと失敗する度に、何度もタイムトリップしてしまうが、何度戻っても新たな問題が現れてしまうことに気づく。そして戻れる回数の限度を知った時、最期何処に戻るのか...。
映画の後半では、結局前と変わらない今(現在)を生き、タイムトリップした様々な経験も忘れ去られる。(それは相手の未来人の彼によって記憶を消されるのだが)
しかし、過ごした思いは消えることはない。 タイムトリップしてもしなくても、現実に生きていたことの事実は変わることなく、大切な思いは時の流れを超え、いつでも思い出すことは出来るんだと思う。(映画のラストシーンはそんな余韻を感じさせている)
やっぱり、時間を遡ってやり直したい、と思っていたことも、今では、たいしたことではないなと思えている自分に気付いてしまった。
過去は切ない。でもそれは、今を生きているから、切ない気持ちを大切にできる。
結局大切なのは、今この時、いろんな想いに支えられながらそれに気付き、生ききることだ。